「最近、外出するのが怖くて家で過ごすことが多い」
「動くと心臓がドキドキするから、なるべくじっとしていたい」
パニック障害を抱えていると、どうしても身体を動かす機会が減ってしまいがちですよね。
実は、パニック障害と運動不足には深い関係があると言われています。
「運動不足だからパニック障害になる」という単純なものではありませんが、運動不足が症状を長引かせたり、逆に適切な運動が回復の近道になったりすることは、医学的にも注目されています。
この記事では、なぜ運動がパニック障害に良いのか、その理由と無理なく始められる対策について解説します。
パニック障害と運動不足の意外な関係とは?
結論から言うと、適度な運動はパニック障害の改善に非常に有効です。その理由は主に4つあります。
1. 「心臓のドキドキ」への恐怖心が減る
これが最も重要なポイントです。
パニック障害の方は、階段を登った時などの「心拍数の上昇」や「息切れ」を、脳が「発作が起きる前兆だ!危険だ!」と誤認識してしまう傾向があります。
運動不足の状態だと、少し動いただけですぐに心臓がバクバクしてしまい、予期不安につながりやすくなります。
しかし、あえて運動をして心拍数を上げる経験を積むことで、「運動してドキドキするのは当たり前。危険なことではない」と脳に再学習させることができます。
これは専門的な治療法(内部感覚エクスポージャー)と同じような効果が期待できます。
2. 「セロトニン」の分泌を促す
不安感の抑制や、心の安定に欠かせない脳内物質「セロトニン(幸せホルモン)」。
このセロトニンは、一定のリズムを刻む運動(リズム運動)によって分泌が活性化されることがわかっています。
- ウォーキング
- ジョギング
- サイクリング
こうした一定のリズムで行う運動は、弱ったメンタルを底上げする天然の薬のような効果があります。
3. 不安エネルギーを体の外へ逃がす
人は不安やストレスを感じると、体にエネルギーを溜め込みます(いわゆる「闘争・逃走反応」)。
しかし、現代社会では実際に戦ったり逃げたりしないため、このエネルギーが行き場を失い、イライラや強い不安感として体内に残ってしまいます。
運動は、この溜まってしまったストレスホルモンを物理的に消費・排出するための最も効率的な手段です。体を動かした後に気分がスッキリするのはこのためです。
4. 自律神経のバランスが整う
パニック障害は、自律神経のスイッチ(交感神経と副交感神経)の切り替えがうまくいかない状態とも言えます。
日中に運動をして「交感神経」を適度に働かせ、夜は疲れてぐっすり眠ることで「副交感神経」を優位にする。このメリハリをつけることで、乱れた自律神経が整いやすくなり、発作が起きにくい体質づくりにつながります。
どんな運動が良い?おすすめと目安
いきなり激しい運動をする必要はありません。むしろ、強すぎる負荷は逆効果になることもあります。「やや楽〜ややきつい」と感じる程度がベストです。
- おすすめの運動
- ウォーキング(散歩)
- 軽いジョギング
- ヨガ、ストレッチ
- 水泳(ゆっくり泳ぐ、水中ウォーキング)
- 頻度と時間の目安
- 1回 20分〜30分程度
- 週3回以上(できれば毎日)
まずは「近所を10分歩く」ことからでも十分な効果があります。
「外に出るのが怖い」という方は、お家トレーニングから始めましょう
いきなり外でウォーキングをするのが不安な方は、家の中でできる運動でも十分効果があります。
特に「踏み台昇降(ステップ運動)」は、家の中で安全にリズム運動ができるので、パニック障害のリハビリとして取り入れている方も多いですよ。
▼踏み台昇降(ステップ運動)
「テレビを見ながら無心でやれば、不安なことを考える時間が減ります」
「高さ調節ができるので、体力に自信がない人でも安心」
▼極厚ヨガマットでのストレッチ・ヨガ
「心の緊張は体の緊張から。フカフカのマットの上で深呼吸するだけでも、立派なリラックス運動になります」
▼バランスボール
「椅子代わりに座って弾むだけ。この『揺れ』が赤ちゃんをあやす時のように、脳をリラックスさせる効果があると言われています」
▼フォームローラー(筋膜リリース)
「不安で縮こまった背中をゴロゴロほぐしましょう。胸が開くと、自然と深い呼吸ができるようになります」
【重要】運動を始める際の注意点
運動は薬にもなりますが、やり方を間違えると負担になります。以下の点に注意してください。
- 調子が悪い日は無理をしない
「毎日やらなきゃ」という義務感はストレスになります。体調が優れない日は休んでOKです。 - 医師に相談する
現在通院中の方は、どの程度の運動なら大丈夫か、主治医に相談してから始めると安心です。 - 発作中は休む
もし運動中に具合が悪くなったら、すぐに中止して休憩しましょう。「ここで休めば大丈夫」という安心感を持つことが大切です。
まとめ
運動不足を解消することは、単に体力をつけるだけでなく、「自分の体への信頼感」を取り戻すプロセスでもあります。
「ドキドキしても大丈夫だった」
「今日は20分も歩けた」
そんな小さな成功体験の積み重ねが、パニック障害の克服へとつながっていきます。
まずは天気の良い日に、家の周りを少し歩くことから始めてみませんか?

